抄録
本研究では,人物の情報がその人の表情認知に与える影響を明らかにすることを目的として,順応を用いた実験を行った。同等の正確さで表情を認知される二人の刺激人物について,一方の人物に5分間順応した後では,順応した人物の表情認知は順応しなかった人物の表情認知と比較してより正確に行えるようになり,また順応した人物の表情認知は順応前より順応後のほうがより正確に行えるようになった。これは先行研究と同様に,順応によって人物の情報の処理に必要な認知資源が減り,同じ刺激が含む他の情報(本実験では表情)の処理により多くの認知資源が割けるようになった結果であると考えられる。また本実験により,表情を表出している人物に対する順応が表情の認知に影響を与えることが明らかになった。