抄録
ワーキングメモリの容量を測定するテストとして,Daneman & Carpenter(1980)の,刺激文を視覚呈示するリーディングスパンテスト(RST)と聴覚呈示するリスニングスパンテスト(LST)があり,これらは読解力テストと有意な相関がある。今回は,遠藤・苧阪(2009, 2010)のRSTにおける研究と同様の方法で,LSTにおける方略利用を調べた。その結果,LSTではチェイニングの利用が他の方略と比べて低かった。また,単語イメージの利用割合と全ての得点化法による成績,全ての得点化法による成績と正誤判断の正答率に,有意な正の相関があった。さらに,個人差分析では,単語イメージにおいてのみ高得点群と低得点群のあいだに差があった。ここから,単語記憶と正誤判断という二重課題の両方において個人差があること,LSTではチェイニングの利用が難しいこと,単語イメージの利用が成績につながっていることが考えられた。