抄録
これまでの研究において,学習者が行う運動学習に対して観察者が既学習判断をする場合,判断を行うタイミングを遅延するとその判断と実際のパフォーマンスの一致率が低下することが示唆されている.しかし,それらの実験は同一の観察者に求めた学習直後判断と遅延判断を比較するものであった.このため,一致率の低下は遅延による低下ではなく,判断を繰り返したことによる低下という可能性もある.そこで本実験では,実験参加者を学習直後判断群と遅延判断群の二群に分け,それぞれに映像として映し出された運動学習を観察させて判断を求めた.その結果,学習直後判断は遅延判断に比べてパフォーマンスとの一致率が高く,運動学習に対する観察者としての既学習判断は遅延により不正確になるということが確認された.