抄録
これまで文章理解に対する説明予期の効果が検証されてきたが,先行研究では一貫した効果は得られていない。ただ,その効果は学習者が持つ説明に関する認識(構築的説明志向)によって異なると考えられる。例えば「説明とは,精緻化を通して分かりやすく伝えるものだ」と説明を知識構築的な過程として考える学習者が説明を予期した場合,学習中にも読解方略を積極的に用いることで深い理解を達成するだろう。そこで,本研究では中学2年生に対して,半分の参加者にのみ説明を予期させる教示を与え,論説文の読み取りと推論を要する多肢選択テストへの回答を求めた。結果,両群のテスト成績に差は見られなかった。しかし,構築的説明志向との関連を調べたところ,予期なし群では関連が見られなかった一方,予期あり群では構築的説明志向得点が高くなるほどテスト成績が向上した。よって,構築的説明志向によって説明予期の効果は異なることが示唆された。