抄録
先行研究では、左脳損傷患者に対する行動実験と損傷部位の相関から、道具使用においては、その使用法に関する知識が側頭葉、対象物との関係からの新奇な道具の機能の推論、すなわち力学的推論は縁上回が関連していることが示唆された。本研究では、力学的推論の役割をより詳細に解明することを目的とし、健常者に対する行動実験及びfMRIによる脳活動計測を行った。行動実験では、視覚刺激として、物体の形状や位置の変化を表す2枚の図、そして道具の図を順番に呈示し、実験協力者には物体の変化が道具により実現可能であるかどうかを判断させた。力学的推論を必要とする条件として、道具の形状の新奇性及び道具の使用法の新奇性の二つを仮定し、これらの要素の有無から4条件の課題を設定した。反応時の脳活動の課題間比較により、力学的推論が道具の形状、使用法のどちらの新奇性に対して関連しているかを検討した。