抄録
体験した出来事の記憶を思い出す過程(検索過程)については多くの研究で、想起すべき記憶(ターゲット)の検索手がかりと連合した記憶のみが活性化されて想起されると考えられている。本研究では三つの実験を通じてこの想定を再検証した。実験の結果、ターゲットを検索する時点の活性値(base-level activation)が高い記憶であれば、ターゲットやその検索手がかりと連合していないような記憶であってもターゲットとともに活性化されることが示された。この知見は、検索手がかりとの連合強度だけでなく検索時の活性値の高さもエピソード記憶の検索処理の規定要因になることを示している。また本知見は、海馬依存性の記憶検索の機序やPTSD患者における侵入的想起についても重要な示唆を与えるものである。