抄録
音声コミュニケーションにおいて,話者の顔を見ることにより会話の理解が促進されることが報告されている.この音声コミュニケーションの促進は,話者の顔を見ることによるミラーニューロンシステムの活動による発話の運動系列予測により実現されているものと考え,音声聴取課題を実施中の脳波計測を実施した.本研究で用いた音声聴取課題では,顔の映像と音声の提示タイミングを操作するとともに,映像のモザイク条件を設定することで,ミラーニューロンシステムの寄与を検討可能な課題となっている.得られた結果は,顔映像により音声聴取成績が向上することを示すとともに,ミラーニューロンシステムの指標である脳波ミューリズムの減少がみとめられた.このことは,音声コミュニケーションにおいて,話者の表情を見ることにより発話の運動系列を予測することが,音声理解を促進しているとする我々の仮説を支持するものである.