2024 年 53 巻 3 号 p. 114-118
若年者に対する大動脈弁置換術を行う際には耐久性の問題から機械弁が推奨されている.しかし,機械弁は生涯にわたるワーファリンの内服が必要であり,易出血性などのリスクを伴うため,場合によっては若年者においても生体弁による置換を行う場合がある.今回,TAV in SAVを見据えて弁輪拡大を伴う生体弁置換術を行い術後良好な経過を得た症例を経験したため文献的考察を加えて報告する.症例は51歳男性.検診で心雑音を指摘され前医を受診したところ精査で重症大動脈弁狭窄症を認めたため,手術加療目的に当院を紹介受診した.入院の上,精査を行い,つづけて入院8日目に手術を行った.弁選択についてはワーファリン内服の観点より生体弁を強く希望された.そのため,若年であることよりTAV in SAVを行う可能性も考え,必要に応じて弁輪拡大を行う方針とした.術中,弁切除ならびに脱灰を行った後にサイザーを入れるも19 mmサイザーが通らず弁輪拡大を行い,23 mm弁による置換を行った.術後は大きな問題なく経過し術後14日目に自宅退院となった.将来TAVIを行った際にPPMが生じることを避けるためにも若年者における生体弁を用いた大動脈弁置換術を行う場合は,積極的に弁輪拡大術を行うことを考慮するべきである.