抄録
本研究では,様々な記憶課題に対する困難度判断と記憶成績の予測における若年者と高齢者の違いについて検討した。調査対象者は,若年者64名(専門学校生)と65歳以上の高齢者29名であった。調査対象者には,刺激の呈示時間の4条件(2秒・4秒・8秒・無制限)と刺激項目数の5条件(8個・16個・24個・32個・40個)を組み合わせた20通りの記憶課題を印刷した質問紙を配布し,それぞれの記憶課題に対する困難度判断と記憶成績の予測を回答することを求めた。その結果,若年者では,呈示時間が増加すればするほど,記憶課題の困難度を低く評定していたが,高齢者では,呈示時間が増加したとしても,記憶課題の困難度判断に変化はなかった。呈示時間(学習時間)と記憶課題の困難度の関係性についての認識が若年者と高齢者では異なっており,高齢者にとっては呈示時間の変化が記憶課題の困難度判断に重要ではないことが示唆された。