抄録
香りが作業遂行と気分に及ぼす影響を,事前情報と香りの既知性の観点から調べた.実験1では,グレープフルーツの香りの“効果”を意図的に操作し,クレペリン作業と気分に及ぼす影響を調べた.実験2では,更に作業を「知的作業」と「単純作業」に分け,香りがそれぞれに対してどのような影響を与えるのかを詳細に検討した. 2つの実験から,香りには,作業の種類を問わずその効率や結果を変化させる効果は薄いということを示す結果が得られた.一方,気分評価に対しては,香りに関してあらかじめもっている知識に合致するようにその評価が変化する可能性が示された.これらの結果から,香りには,作業のような具体的・客観的に評価しうるような側面を劇的に改善させる効能は期待しにくい反面,気分のような主観的な側面についてはそれを好転させうると言うことが出来よう.