抄録
本研究は,情報機器の操作時に感じる不満の原因の一つである待ち時間について,認知的アプローチによる問題解決を目指し,待つ行為の認知課程を明らかにすることを目的としている。本報告では,通信状態を事前に「通知」することが待ち時間に対する満足感に与える影響を評価した。実験では,492名の参加者が携帯電話でのメール送信時に発生する待ち時間への満足度を評価した。回線状況の事前通知は,「回線状況に問題が無いことを伝える」「混み合っていることを伝える」「混み合っていることを謝罪する」の3つの条件を設定した。その結果,長い待ち時間長において謝罪条件と問題有条件が問題無条件より高い満足度を示し,また,短い待ち時間長では,謝罪条件が問題あり条件より高い満足度を示した。これより,待つ行為への満足度評価は,単純な時間長からだけでなく,待ち時間の認識および社会的相互作用要因により影響を受けることが明らかとなった。