抄録
マガーク効果とは,特定の音節を発音する口の動きに,別の音声を重ねた映像を呈示した場合に,視覚情報・聴覚情報のどちらでもない第3の聞こえ方をする錯覚現象であり,私たちが音声知覚をする際に視覚情報の影響を受けることを示唆している.本研究では,定型発達者を対象に,自閉症傾向を指標として, マガーク効果の個人差を検討した.その結果, 自閉症傾向は視聴覚の統合過程に影響し, 課題の視覚依存性にかかわらず, マガーク効果の生起と関連することが示された。本研究から, 自閉症傾向が高い人は、視聴覚統合処理において媒介される運動情報の影響を受けにくい可能性が考えられる.