抄録
本研究では2者間における足踏み動作の同期の強さと自閉性傾向との関連について検討した。対面条件では2名の被験者が向かい合い,非対面条件では一方が他者の背中に向かった状態で,その場で足踏みを60秒間続けるように求められた。前半30秒間はカーテン幕で相手の姿が見えず,後半30秒では幕を取り除いた。実験の結果,自閉性レベル低群・中群のペアでは,対面条件において2者間の歩行周期長の差および足首が頂点に達するタイミングの差が前半に対して後半で減少し,足踏みの同期傾向がみられた。しかし,高群ではこのような傾向はみられず,また同期の強さは自閉性レベルと有意な相関を示した。したがって,社会性を排した状況における社会的に無意味な単純動作の同期が個人の社会特性に密接に関わるという,社会的スキルの成立に重要な示唆を与える知見を得た。