抄録
表情認知の研究では、感情を表現する人物(実験刺激)と知覚する人物(被験者)が同じ文化的背景をもつ場合、異なる文化的背景をもつよりも正確に判断できることが報告されている(内集団優位性)。本研究では、内集団優位性について表情刺激と音声刺激で比較するとともに、日蘭被験者間で文化間比較をおこなった。実験に先立って、日蘭各8名のモデルによる感情表現をビデオ収録し、表情刺激(音声なし)および音声刺激(表情なし)を作成した。日蘭の大学生が実験に参加し、それぞれ日蘭双方の刺激に対して判断をおこなった。実験の結果、表情刺激と音声刺激のいずれにおいても内集団優位性が確認され、とくに音声刺激では内集団優位性が大きくなることが示された。また、とりわけオランダ人被験者にとっては、内集団(オランダ人刺激)と外集団(日本人刺激)での正答率に大きな差が見られ、内集団優位性には非対称性があることが示唆された。