抄録
ある記憶の検索が他の記憶の忘却を導く現象として,検索誘導性忘却が知られている。検索誘導性忘却は,エピソード的な検索だけでなく,意味的な検索によっても起こることがわかっている。ネガティブ単語はニュートラル単語に比べて,記憶成績が高いという特徴を持つが,意味的検索がネガティブ記憶の忘却を導くかはいまだ不明なままである。そこで本研究は意味的検索によってネガティブ記憶が忘却されるかを検討した。はじめに,実験参加者にニュートラル,ネガティブな単語を学習させた(例. 苦痛-頭痛)。その後,学習した単語と意味的に関連する未学習の単語(例.苦痛-病気)を生成させた。最後に,学習した単語に対する語幹再生テストを行った。語幹再生テストの結果,学習したニュートラル,ネガティブ単語ともに忘却が確認された。本研究結果から,意味的な検索による忘却がネガティブ単語記憶にも適用可能であることが初めて明らかにされた。