日本認知心理学会発表論文集
日本認知心理学会第10回大会
セッションID: O5-3
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口頭発表5(記憶②)
金銭的報酬による記憶の固定効果
ドーパミン調整仮説の検討
*北神 慎司村山 航
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抄録
近年,神経科学において,金銭的報酬が中脳ドーパミン系を活性化し,ドーパミンが海馬の活動を直接的に調整することで,記憶が固定されるという仮説が提出されている.この仮説に基づくと,金銭的報酬は,動機づけや注意を媒介しなくても記憶は促進されることになるが,この点を直接検証した研究はいまだ見当たらない.そこで本研究では,記銘刺激を呈示し,その後に全く異なる課題として金銭報酬を予期する手がかり刺激を呈示した.その結果,金銭的報酬の手がかりは,その直前に提示された無関係刺激の記憶を,遅延記憶課題においてのみ促進した.さらに,強化学習モデルを適用することで個人内の記憶の分散が,推定された試行ごとのドーパミン量と相関することが明らかになった.以上より,金銭的報酬が動機づけや注意とは独立に記憶の固定に影響を与え,そこにはドーパミンによる調整メカニズムが働いていることが示唆された.
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© 2012 日本認知心理学会
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