抄録
近年,家庭用機器にも3D映像技術が組み込まれつつあるが,その効能は迫力やリアリティ感など感性的側面に限られている.一方医療機器では3Dが理解を容易にする要素技術として用いられており,もし3D映像が視覚的情報処理を促進するのであれば,一般利用においてもそれを生かす可能性がある.そこで本実験では,家庭用3Dテレビ受像機を用い,複数の視覚的刺激提示を行う課題を大学生と高齢成人間で比較した.その結果,特にブロック組立過程の理解・記憶において,若年成人では3D提示では2D提示よりもエラーが少ないことが示された.しかしその効果は高齢者群では観察されず,逆に利用後の主観評価では,若年成人群にのみ「3Dは疲れやすく,使いたくない」ことが示された.これらは人の3D映像の効果的利用は自動的ではなく,認知的負荷が高いことを示しており,医療等業務利用において注意が必要であることが示唆された.