抄録
近年、動作の実行と観測で同じように反応するミラーニューロンという神経細胞が 大脳の新皮質で発見され、動作の理解に重要な働きをすると考えられている。さら に最近の研究では言語の理解においてもこのミラーニューロンが深く関わっている ということが示唆されている。本研究の目的は、日本語単文を黙読する際の脳波を 測定し(1)動作動詞条件(2)抽象動詞条件(3)疑似動詞条件間での比較をすることで、 ミラーニューロンによる動詞の意味理解プロセスと文全体の意味理解プロセスが時 系列上でどのように関わっているかを明らかにすることである。また、ミラーニュ ーロンは動作主が自己か他者かによらず反応するという性質を持つため、文を正し く理解するためには動作主を特定する機構(who-system)も必要となってくる。 そこで本研究では上で述べた条件間比較に加えて主語が(1)自己か(2)他者かの条件 での比較も行う。