日常の問題場面で,人間は経験に従って解を導くこともあるが,偶発的に解をひらめくこともある。本研究では,問題解決において偶発的に生じると考えられるひらめきが,社会的情報の影響を受けるのかを調べた。まず,統制条件の被験者は30分以内にできるだけ速くTパズルを完成させることが求められた。その結果,被験者の平均完成時間は約10分であった。次に別の被験者に「他の人は5分で解いたパズルである」と偽の情報を伝えて課題をさせたところ,30分以内のパズルの完成者数は統制条件よりも多かった。また別の被験者に「他の人は20分で解いたパズルである」と伝えて課題をさせたところ,パズルの完成者数は統制条件よりも少なかった。つまり,事前に与えられた他者の成績に依存して,ひらめきの生起が促進・抑制された。この結果は,問題解決において偶発的に生じると考えられるひらめきの生起が,他者の成績に対して同調することを示唆している。