覚醒水準が極端に高くなりやすい緊急事態には、ヒューマンエラーが発生しやすいと言われている。しかし、緊急事態下の行動に関する研究は、ほとんどが事例分析や集団パニックに関するものであり、個人の緊急事態下の行動を実験的に検討した研究はほとんどない。そのため、本研究では、緊急事態の定義となる「時間切迫性」と「重大性」の2つを同時に設定した環境(高覚醒条件)を設定し、実験参加者に水道管ゲームを遂行させた。また,副次課題として時折画面中央にターゲットを提示し,できるだけ速く正確に反応するように求めた。 その結果,統制条件と比較して高覚醒条件では,クリック回数が増え,思考時間も短くなった。また,ターゲットに対するミス率とFA率も高くなった。つまり人間は,非常事態に「深く考えないとりあえずの行動」を積極的に実施しがちになり、また実施中の作業以外への事象に対して気づきにくく,間違って反応しやすいといえる。