抄録
Baddeley, Thomson, & Buchanan (1975)は音韻の長さがメモリスパンに影響する語長効果を見出した。しかし,この実験で用いられた単語は音韻数が多いほど文字数も多かった。また,日本語母語者は文字処理で英語母語者より音韻コードへの依存度が低く形態コードへの依存度が高いことも明らかにされている(水野・松井・Bellezza, 2007)。そこで我々は,日本語母語者のメモリスパンは音韻の長さよりもむしろ文字数の影響を大きく受けるという仮説を立てた。実験では,モーラ数が3と一定で文字数が1,2,3文字の単語で日本語母語者のメモリスパンと読みの速度を測定した。その結果,メモリスパンは1・2文字の単語よりも3文字の単語の方が少なく,読みの速度は1・2文字の単語よりも3文字の単語の方が遅く,我々の仮説が検証された。