抄録
BGM文脈依存効果とは,符号化時と想起時のBGMが一致する場合に,不一致の場合よりも,よく想起できる現象である。今までのBGM文脈依存効果の研究の中で,未知楽曲を研究対象としてきた場合が多い。しかし,日常場面において,既知楽曲がBGMとなる場合が多いから,既知の楽曲でもBGM文脈依存効果の研究を行う必要がある。
本研究は既知の楽曲を More familiar music と Less familiar music の2水準の熟知性を設定して,それぞれの文脈依存効果を調べた。文脈と楽曲の熟知性の2要因実験参加者計画で,実験参加者は92名の実験を行った。文脈と楽曲の熟知性の2要因分散分析の結果は文脈の主効果と楽曲の熟知性の主効果がいずれも有意でなかったが,交互作用が有意であった。下位分析の結果はMFにおける文脈単純効果が有意でなかったが,LF条件では文脈単純効果が有意であった。
本研究は既知の楽曲でも,熟知性により,文脈依存効果が異なることを見出した。本研究は既知楽曲の多様性を示唆した。