抄録
幼児の描画構成の発達に関わる認知的側面を捉える目的から、描く大きさと位置を捉えるための空間認知能力と状況に応じて描く反応を切り替える能力に着目した。5歳児22名、6歳児21名が描画課題、空間認知課題、切り替え課題の各々に参加した結果、(1)描画課題では通常描かれ難い非標準型の対象が6歳児で5歳児より多く見られ、(2)空間認知課題と切り替え課題では6歳児の方が5歳児より得点が高かった。つまり、年齢に伴う描画構成の質的変化と共に大きさと位置を捉える空間認知と、標準型から非標準型への切り替えに向上が見られた。さらに、(3)年齢を統制した場合、非標準型を描いた児の方が標準型を描いた児よりも切り替え得点が高かった。これは空間認知能力が描画構成の発達の必要条件であることを意味する。以上から、描画構成の発達には一定の空間認知能力と状況に応じて反応を切り替える一定の能力が共に関与することが示唆された。