抄録
ネットワークに接続されたICT機器の使いやすさに待ち時間は大きな影響をもつ。利用者は待ち時間を通してサービスの提供状態を理解し,それに適応した行動を取っている。このため,使いやすいサービスの開発には,サービスの状態を適切に理解することができるような待つ行為のデザインが必要となる。著者らは認知的アプローチの観点から待つ行為を捉え,待つ行為への満足感を評価する過程を数理モデル化することで,定量的なサービスデザインへの適用を検討している。本報告では,携帯電話を用いた待つ行為への満足度評価を行った実験結果を数理モデルで解析して期待値を推定し,さらに期待される待ち時間長を再生法で直接測定した実験結果との比較を行った.その結果,二つの異なる実験で類似の分布を持つ結果が得られ,満足度が期待値と経験値の比較により判断されるというモデル化における仮説の適切さが検証された.