抄録
日常的なコミュニケーション場面において,発話と身体運動(身振り)が同期する現象は多数の研究で観察されている。本研究では,手の運動と発声の協調関係について,手の上下運動と発声音の高低といった,空間的な運動の定位(高低)と音質(周波数)の高低の整合性に着目し,両者の間に協調関係があるか否かについて検討した。参加者は,手の上下運動と共に,高い「あ」の音と低い「あ」の音を交互に発声するように要求された。結果として,高い声を出すときに手を上げる位相モードの方が,低い声を出すときに手を上げる位相モードよりも安定していることが示され,空間的な運動の定位(高低)と音質(周波数)の高低が一致している場合に安定した協調関係が築かれることが示唆された。