抄録
人間の行動空間である大規模な3次元空間において,視線は向けられているが奥行位置が異なる場合にフランカー刺激が課題に干渉するのかどうかを調べ,実際空間での注意の配分型と注意の制御様式を検討することを目的とした.刺激は全て7セグメントのLEDを用いた.実験参加者の課題は,標的刺激の形状(∪または∩)を弁別し,できるだけ早く正確に割り当てられたボタンを押し,同時に提示されるフランカー刺激は無視することであった.反応時間において,フランカー刺激の提示位置による有意な差は見られなかった.このことは主課題を行う際にフランカー刺激を無視できることを示している.また,奥行き方向において全ての刺激が観察者の視線上に提示されていたにも関わらず,フランカー刺激による干渉が見られなかったことより,2次元平面上と3次元空間内での注意配分様式の違いが示唆された.