対象に関する知識を有していたとしても,その知識を行動として実行しようという行動意図が形成されなければ,行動を伴う知識を習得したとは言い難い。そのため,知識と行動意図の不一致を軽減させる仕組みが学習教材に求められている。本研究では,説明文と挿絵共に両事例を用いた学習素材(北川他,2013,JSCP11)の説明文と挿絵から正事例もしくは誤事例を一つずつ省略した学習素材を用いて,説明文と挿絵の組み合わせが行動意図の生成に与える影響について検討を加えた。その結果,説明文と挿絵が異なる事例を表す場合,両者が補完的な役割を果たす可能性も考えられたが,知識と行動意図の不一致が示された。しかし,説明文と挿絵の両方に誤事例が含まれている条件では,知識課題と意図課題の正答率は同等の水準であった。この理由として,異なる表現で誤事例を提示することが恐怖コミュニケーションとしての役割を果たした可能性が考えられる。