抄録
本研究は,DRMパラダイムを使用し,言語材料に位置情報を付加し,位置情報が虚記憶に与える影響について検討した。大学生414名を対象に,4リストからなるDRMリストを用いた記憶実験を行った。その際,言語材料に対して位置情報を付加して位置情報も記銘する群(位置情報記銘群),位置情報は無視する群(位置情報無視群),及び位置情報を付加しない群(位置情報なし群)の3群が設定された。学習の直後に自由再生テストを行い,さらにその1週間後に再認テストを行った。その結果,再生成績が高い順から位置情報無視群,位置情報なし群,位置情報記銘群となり,位置情報を記銘するという行為が記憶負荷の増大につながることが示された。虚再生数は位置情報記銘群と位置情報無視群の方が位置情報なし群よりも有意に低かった。つまり,位置情報の付加は記銘活動に対して負荷を増大させるが,虚記憶に対してはその生起を抑えることが明らかになった。