本研究では,少ない募金額を重要視するか,被災者数を重要視するか,という葛藤する募金場面で,各おとりの選択肢(以下,Dと略す)により,社会福祉的に望ましい選択が増加すると予測し,検討した。各おとり選択肢は,(a)魅力効果でのD(Tに類似しているが,それよりも劣る選択肢),(b)妥協効果でのD(Tが,3つの選択肢の中間に位置させるようなおとり選択肢),(c)幻効果でのD(Tと類似していて,それよりも優れているが,利用できない選択肢),である。質問紙調査の結果,魅力効果や幻効果でのDは,社会福祉的に望ましい選択を増加させることがわかった。この結果は,選択が困難な募金場面において,おとり選択肢が,社会福祉的に望ましい選択肢を促すのに有効であることを示している。しかし,妥協効果でのDはそのような結果は得られなかった。