抄録
隠匿情報検査は,犯罪捜査で実際に用いられている記憶の検査手法である。事件に関する項目と関係しない項目を被検査者に示し,両項目に対する生理反応に違いがあれば,“被検査者は事件に関する項目を知っている”と判定する。本研究では,隠匿情報検査がどの程度の正確性をもつのかについて,実験データを用いて調べた。実験では,参加者80名がゆびわを模擬的に盗み(記憶あり群),72名は何も盗まなかった(記憶なし群)。その後,すべての参加者が模擬窃盗事件に関する隠匿情報検査を受けた。この検査データを,参加者がどちらの群に属するかを知らない実験者36名が判定した。判定結果と実際の記憶の有無を照らし合わせたところ,False positive率が5%,False negative率が14%であった。また,ロジスティック回帰分析により,判定に有効な生理指標は心拍数・皮膚伝導度反応・呼吸速度であることが分かった。