抄録
Jacoby, Shimizu, Daniels, & Rhodes(2005)は再認テスト時にテスト項目が特定の情報源で提示されたかどうかに基づいて判断した場合,学習項目だけでなく新項目にも処理水準効果が生じることを報告した。長・藤田(2012)は刺激材料として行為文を用いて,符号化時に行為の実演を操作したところ,処理水準効果の持ち越しは見られなかった。この結果は検索時に行為を実演したことで,検索時の再認判断が容易になったため,処理モードを再現せずに再認判断を行ったと考えられた。そこで本研究は検索時にも行為の実演を求めることで,処理モードが再現されやすくなるかどうかを検討することを目的とした。その結果,学習項目と新項目の両方に処理水準効果が見られた。今後は符号化時と検索時の処理の一致と検索時の実演による示差性の減少によって処理モードを再現したかを明らかにする必要がある。