抄録
近年,心的回転課題における身体化認知 (embodied cognition)の効果が,手や足を刺激とした心的回転課題成績が対応する部位と運動能力の相関から示されている。本研究は,心的回転課題における身体化認知の効果と粗大協応運動能力の関わりを検討した。立方体図形に頭部がある条件とない条件での心的回転課題成績を比較するとともに,日本版BCT検査により粗大協応運動能力を測定した。結果,頭部による反応時間の短縮から,身体化認知の効果を確認した。頭部による正答率増加はBCT成績低群で高群より大きかったが,回転角度に伴う効果はなかった。したがって,回転ではなく,図形の照合操作における効果と考えられる。さらに,BCT下位検査では,この効果が特に,巧緻性を要する動作に関わることが示された。