抄録
これまで先行手がかりを用いて,単語はユニットとして空間的注意に選択されるが,非語では1文字1文字が選択されることが示唆されている (Sieroff & Posner, 1988) 。本研究は,類似の実験において,音-文字対応が英語と異なる平仮名文字列中の文字同定に,空間的注意がどう関わるのかを検討した。刺激として平仮名4文字からなる文字列刺激が瞬間提示され,参加者は全ての平仮名文字と,その両端の文字いずれかの直下に直前に提示された手がかり刺激(数字)を記入式で答えることを求められた。結果において,手がかりによる促進効果が見られなかったことに関しては,左右の手がかり位置間の距離を改善する余地がある。しかし本研究において,両端の文字の同定率が同様に内側の文字より高いことを見出した。この結果は,左側の文字同定率が高かった先行研究とは異なるため,書記体系の違いによって空間的注意の配置が異なる可能性が示された。