本研究は,従来の研究では交絡していた課題の構えと顔刺激の有無を分離した上で,負荷理論(Forster & Lavie, 2008)が予測するように,高負荷条件下で完全に課題非関連な周辺の顔刺激は,中央の文字弁別課題の遂行中でも注意を捕捉するかを検証した。負荷理論に一致するのであれば顔の注意捕捉はなくなるか,もしくは減少するはずであった。しかし結果は,周辺に呈示された顔画像は文字弁別課題を妨害した。加えて,この効果は正立顔にのみ観察でき,倒立顔や食べ物画像を使用した条件では観察できなかった。さらに,探索課題のオンセットと顔画像の呈示タイミングという時間的要因を双方が共有しなかった条件でも顔固有の効果が見られた。従って,顔は観察者の構え,知覚負荷,呈示タイミングに関わらず刺激駆動的に注意捕捉する特殊な刺激であると結論できる。