抄録
井関他(認知心大会, 2013)は,SART(Sustained Attention to Response Task)を行っているときに同時的にボタン押し反応を求めると,ボタン押し開始時の反応時間に比べて,終了時(ボタンを離す)の反応時間が長くなることを見出した。この現象は,ほぼ同じ課題だがより注意要求の少ないTFT(Traditionally Formatted Task)ではみられなかった。本研究では,終了時の反応がボタン離しでない場合にも同様に遅延現象がみられるかを検討する。実験1では,実験の開始時からボタンを押し続け,プローブが提示されたらボタンを離し,消えたら再び押すことを求めた。実験2では,プローブ提示の際と消失の際にそれぞれボタンを押してすぐに離すことを求めた。いずれの実験においても,プローブ消失時の反応は提示時よりも長く,この遅延はTFTよりもSARTで大きかった。本研究の結果から,二次課題終了時の反応遅延は,特定の反応形式に依存するものではないことが明らかになった。