我々は近年,概念的レベルでの刺激-反応適合性がみられることを報告しており,この抽象化されたレベルでの情報共有は運動出力間でも生じている可能性が指摘される。本研究では,発声と手運動という異なる運動出力間での適合性について検討した。実験では被験者に,大きな声あるいは小さな声を発声しながら,小,中,または大の3種類の大きさの円を描画するように求めた。結果から,大きな声を出しているときには小さな声を出しているよりも,描画される円の大きさが大きくなり,異なる運動反応において運動の強さ/大きさに関する運動−運動適合性が生じることを示唆された。発声と手運動のように異なる運動反応であっても,それらに関連する情報は抽象化されたレベルで(例,大-小,強-弱)共通に表現され,相互に影響を与えるものと考えられる。