人間はボールの衝突などの視覚情報の変化から因果性を判断することができる.本研究では,複数の衝突が短時間に連続して起こる場合に,どのように因果性が判断されるのかを実験的に検討した.実験では,因果性のある/ないものを含む7組のボールの衝突がほぼ同時に起こる動画を用いて,その内の1組の因果性を判断させた.どの衝突の因果性を判断するかがあらかじめ指定されず,動画終了後に指定された場合,実験参加者は正しく因果性を判断することが出来なかった.しかし,その場合でも,特定の衝突ではなく,因果性のない衝突が全体で何割あったかを回答させると,ほぼ正確に判断できることができた.割合が回答できるということは,個々の衝突を知覚できていることを意味するため,これらは矛盾を含んでいるように見える.この結果をもとに,我々の因果性判断のメカニズムを定量的に検討した.