閾下プライミングなどの潜在情報が,洞察問題解決のような高次認知活動も促進することが明らかにされているが,その効果が現れない場合がある。特に,新しいアイデアを考えようとする意識的な努力が,有益な潜在情報の利用を妨げる可能性がある(意識的コントロールの逆説的抑制効果)。このような潜在認知と意識的コントロールの相互作用のしくみについて二つの仮説を立てた。過剰集中仮説は,過剰な集中が有益な情報の取り込みを妨害すると仮定する。ミスラベル仮説は,潜在的に侵入した情報には「陳腐ラベル」が付与されると仮定する。これらの仮説を検証するため,課題への集中を促す条件(集中条件)を設定して実験を行った。実験の結果,過剰集中仮説がおおむね支持されたが,一部の結果は仮説と整合的ではなかった。教示による意識的コントロールの誘導の妥当性など,方法論的な検討課題もあるため,引き続き証拠を累積する必要があるだろう。