単語の意味と合成音声の声質との印象一致による効果を検討するため,聴覚的単語完成課題(潜在記憶を測定),および聴覚的再認課題(顕在記憶を測定)を用いた記憶実験を実施した.実験は学習段階とテスト段階から構成されていた.実験は学習(あり/なし),単語の意味と合成音声の声質の印象一致(一致/不一致),学習時とテスト時の声質(同一/異なる;テスト時のみニュートラルな声質)の三要因が操作されていた(参加者内計画).単語完成課題の結果より,聴覚的なききやすさはニュートラルな声質の方が上だが,心的語彙へのアクセスは,印象一致があり,かつ学習時とテスト時の声質が同一の場合に促進されたことが示唆された.また,再認課題成績との比較から,単語の意味と声質との印象一致は潜在記憶と顕在記憶とに異なる影響を及ぼしていることが示された.これは言語的情報と非言語的情報との相互作用のパターンの違いを反映していた可能性がある.