長・原口(2013)は,絵画の規則性および複雑性と評価の関係について検討し,規則性と評価の間には逆U字の関係がみられることを示した。しかし,複雑性には法則性が見いだされなかった。Nadal(2010)は,複雑性について,要素の多さ,構成のばらつき,非対称性の3側面があること,および,複雑性の側面ごとに美しさとの関係が異なり,要素の多さは比例関係,構成のばらつきはU字関係,非対称性は関係がないことを示している。本研究では,複雑性は3側面あるというNadal(2010)の立場から,絵画の複雑性と評価の関係を検討した。複雑性と評価性の各得点で回帰分析した結果,要素の多さと評価は比例関係,構成のばらつきと評価は逆U字関係,非対称性と評価には関係がないことが分かった。一部,Nadal(2010)の結果と異なったものの,絵画の複雑性は複数の側面をもち,それぞれ評価との関係が異なることが示唆された。