洪水時は,河川から遠ざかる方向へ避難すべきとされているが,避難時に橋を渡り犠牲となった例も報告されている。紙媒体の洪水ハザードマップでは,避難方向を示す矢印が利用されているが,利用者の所在地が明示されないため最短距離にある河川対岸の避難所へ誘導してしまう恐れもある。一方,Web-GISにGPS機能を実装した洪水ハザードマップでは,利用者の所在地を考慮した矢印の提示が可能である。本研究では,利用者の所在地と同岸で浸水想定区域外にある最も近い避難所への矢印の提示が可能な洪水ハザードマップを作成し,適切な避難所が選択される割合について,現状のハザードマップで利用されている避難方向の提示方法と比較実験を行った。その結果,所在地を考慮した避難方向の矢印を提示した場合に,適切な避難所が選択された割合が最も高かった。これは,本研究で提案する所在地を考慮した避難方向の矢印の提示の効果を示すものと考える。