抄録
高齢者の人工物利用が難しい背景には,運動・知覚・認知機能の加齢があるとされているが,情動的な加齢変化が高齢者の機器利用に与える影響については明らかでない。本研究では,高齢者が示す機器利用に対する「怖がり」のメカニズムを解明するために,外的なリスクを操作し,機器を実際に利用する様子を観察した。参加者はロボット(全長25cm)を操作して,経路のスタートからゴールまで動かすという課題を行った。その際70cmの机上からロボットが落下するリスクの高い状況で課題を行う条件とそのようなリスクの低い状況で課題を行う条件を設け,若年‐高齢者間で比較した。実験の結果,外的なリスクは高齢者の機器利用に直接影響はせず,独立であることが推察された。一方,突発的で心的衝撃の大きな「エラー」出来事が,高齢者の機器利用を一時的に阻害するという外的リスク要因の間接的な影響も示された。