抄録
助数詞は対応する名詞の意味的カテゴリーを規定する意味的性質だけでなく,主要部として名詞句を要求する統語的性質も持つ。しかし,これまでの事象関連電位を用いた研究では,単語の対提示された名詞と助数詞の照合過程が意味的処理のみに依存することが示唆されている。本研究は文中に提示された助数詞と名詞の照合過程が,意味的処理と統語的処理のいずれに依存するのかを検討した。結果として,先行する助数詞と対応しない名詞句が提示された時,意味的統合処理を反映するN400に加え,文構造の処理過程を反映するP600,及び刺激提示後200 ms前後に前頭部に分布する陽性電位が惹起された。このことは,助数詞と名詞の照合過程において,課題状況によって異なる処理が関わることを示唆する。また,本研究で観察された前頭の陽性電位はこれまで報告されておらず,助数詞特有の何らかの処理を反映するかもしれない。