物品の視覚情報と触覚情報から思いつくことばを表出する実験を行い、各感覚モダリティからことばを喚起するときの情報処理過程を検討した。視覚条件では目の前の物品を見て思いつく単語をできるだけたくさん答えてもらった。触覚条件では物品を触っている間に思いつく単語を答えてもらった。視覚条件では色彩と運動に関することば、触覚条件では材質に関することばが多くみられた。ことばの反応カテゴリの表出順位を調べたところ、視覚条件では色彩に関することば、触覚条件では材質に関することばが名称のことばの前後に表出される割合が高かった。これらの結果からは、物品の特徴が脳内でそれぞれどのような情報と繋がっているかは、感覚モダリティによって異なることを示唆する。視覚情報の入力では色彩と名称に関することばのつながりが、触覚情報の入力では材質と名称に関することばのつながりが強いのではないかと考えられる。