抄録
対象の左側を過大視する傾向(pseudoneglect)は視覚的線分と心的数直線の両方で生じるが、線分2等分課題(LB課題)における分割点の左右への逸脱傾向と乱数生成(RNG)課題における平均マグニチュードからの逸脱傾向には対応関係がないことが指摘されている。先行研究では線分に補助斜線を加えて左右に奥行のある3次元情報を付与したLB課題で、視空間と数表象空間に関連が生じることを明らかにした。本研究では男が左方向、女が右方向への奥行きへの偏好があるという知見に基づき、数表象空間の3次元性について男女別に検討を行った。その結果、男性では、左方向の奥行を付与したLB課題でのみRNG課題の数マグニチュードとの関連が認められたが、その関連は空間の左右と数の大小の逆転した関連であった。女性については明確な対応関係は認められなかったが、数表象空間における3次元性に男女差があることが示唆される。