抄録
本研究では,高思考抑制傾向者における自伝的記憶の具体性の減少を,検索誘導性忘却効果によって説明できるか否かについて検討した。参加者は思考抑制頻度をたずねる質問紙へ回答した後,ポジティブ,ネガティブそれぞれ2つずつのエピソードを視聴した。その後,その中の1つのエピソードについて1週間にわたって反すうをするように教示を受けた。1週間後,自由再生課題と手がかり再生課題を行った。その結果,思考抑制得点が高い者ほど,ネガティブエピソードを反すうした際に,ポジティブエピソードがより抑制されることが示された。この結果は,思考抑制とその逆説的効果として生じるネガティブ記憶の侵入,そして反すうを繰り返すことによって,具体的なポジティブ記憶へのアクセシビリティが低下する可能性を示している。