本研究では,藤田・加藤(2015,認知心,前件発表)と同様に,情動喚起刺激が元々持っている属性としての感情価・覚醒度だけでなく,感情価や覚醒度の評定行動自体が符号化としての効果を持つか否かをさらに検討した。藤田・加藤(2015)と同じく,評定を求める際に“その刺激によって参加者か喚起されたもの”と“その刺激自体に内包されているもの”とを区別し,刺激の感情価(ポジティブかネガティブか)の評定を求めた。その結果,内包評定が先行する場合にのみ,喚起評定後の自由再生成績が高くなった。二つの実験を通じて,喚起評定と内包評定とでは後の記憶成績が異なることが示され,情動に関する評定には符号化の効果があることが明らかになった。