本研究の目的は、時間的切迫感が予想時間評価に与える影響の検討及び予想時間評価の認知過程の解明である。本研究では歩行課題を用いて、時間的切迫条件の違いにおける予想時間評価及び予想距離評価の差を比較した。実験の結果は、評価対象に対する手がかりが少ない場合、時間的切迫感は予想時間を長く評価させることが示唆された(研究1)。これは時間的切迫感が課題の中心的情報である距離を長く評価させるためであると考えられる(研究2)。しかし参加者が評価前に何らかの手がかりを持っていると考えられる場合には、予想時間評価は時間的切迫条件間で差はなかった。これらから予想時間評価の認知過程には、切迫感を感じる程度などの個人特性を反映する物理的時間の評価と、距離などの課題特性を反映する課題内容の評価があると考えられる。