抄録
強迫観念は誰にでも起こることがあるが,その程度がひどくなると強迫性障害に至る。強迫性障害の患者は認知抑制の機能が低下していると考えられている。しかし,これは反応時間から得られた結果であり,脳活動を明らかにした研究はほとんどない。そこで本研究では健常者を対象にプライミング効果を用いて,強迫傾向の強さによる行動特性およびそれに起因する脳活動を明らかにした。実験では連続して呈示される単語の色が赤色のときカテゴリー(植物か動物)の分類を行い,緑色のとき分類を考えないことを要求した。行動結果として強迫傾向の強い被験者ほどネガティブプライミング効果が小さい傾向にあった。脳波を時間周波数解析した結果、認知情報処理に関係する前頭葉θ波と言語のポジティブプライミング効果に関係すると考えられる左側頭葉β波が強迫傾向と相関した。これらのことから,強迫傾向が強い被験者ほど認知抑制ができていないことが示唆された。