抄録
Johansson R, Holsanova, Dewhurst, & Holmqvist,(2012)は、記憶の検索時の視線を制限することが記憶成績に影響することを示した。具体的には、画面の中心に表示される注視点に視線を向けながら課題を進める(center条件)より、何も表示されていない画面に視線を向けながら課題を進める(free条件)ほうが課題成績が良かった。 しかしながら、その他の記憶検索時の視線の役割に関する研究では、課題の正確さにおいてだけ差がみられる研究(Laeng,Teodorescu,2002)や、課題の反応時間だけ差がみられる研究(Johansson R,Johansson M,2014)があげられ、結果の指標に一貫性がないことが問題点としてあげられる。 そこで、本研究では、記憶検索時の視線の制限がどの指標に影響を及ぼすのかを再検討することを目的とした。 結果、center条件よりもfree条件のほうが課題の成績が高く、視線の制限の効果がみられた。反応時間については2条件で差はみられなかった。本研究により、記憶の検索の正確さに視線が影響している可能性が示唆された。